いま必要とされる演技

14年間、映画監督による俳優のためのワークショップを運営する中でずっと気になったことがありました。 それは、魅力も才能もあるのになかなかキャスティングの決まらない常連の参加者が多いということでした。

もしかすると、そういう人たちは、自分たちのキャスティングが決まらないのは、「たまたま」だと思っているかもしれません。何回か受けていればいつかはキャスティングが決まるのだと思っているかもしれません。

しかし、はた目から見ていて、そういった人たちには「芝居が硬直している」「決め切ったことしかできない」「うまいだけでイロドリがない」「演技者としていい子ちゃんである」という「演技における根本的な問題」があるのは明らかでした。

そこを変えなければ、どんなにオーディションを受けても、演技者として使ってみたいと思わせることができない。がむしゃらにオーディションやワークショップを受けても落ちる回数を増やすだけ。そもそも「根本的な問題」を解決しないとダメなのです。

ということで、2016年11月からアクターズ・ヴィジョンで始めているのが「マイズナー・テクニック・クラス」です。これは、まさに俳優の「根本的な問題」を改善するためのクラスです。

「根本的な問題」というのは、簡単に言えば、「考えた演技をしてしまう」ということです。「相手役の行為」にたいして「自然な反応をする」のではなくて、「自分で決め込んだもの」を「演じてしまう」ということです。

「考える」というのは、生きるために人間が獲得した能力です。だから、不安な時、「考えてしまう」のは当たり前で、それは普通の時にはプラスです。しかし、カメラの前においては違います。愛の告白をされ嬉しさのあまり驚いて泣いてしまうのは「考えて選択した行動」ではありません。「考える暇もなく」、人間は「驚き」、「怒り」、「笑い」、「泣く」のです。しかし、それを演じる時に人間は、台本を読んで先を知ってますから、どうするかを「考え」、決め込んで「やってしまう」。良い演技をしようとしたり、オーディションに合格しようとしたり、監督に気に入られようとすればするほど、考えて「不自然なことをやってしまう」ことになります。そして、その「考えた芝居」が、嘘くさい、観客を引かせる、残念なものであるのは、実は、多くの俳優が自覚していることだと思います。

そういった人間が思わずしてしまう「考えた演技」を、「「本能」にゆだね、自らの内に生まれた「衝動」によってのみ支配された演技」に変えるのが 「マイズナー・テクニック」です。

アクターズ・ヴィジョンにおいて、このマイズナー・テクニックを教えてくださるのは、俳優であり演出家でもある、演技指導者のボビー中西さん、青山治さんです。ボビー中西さんは、マイズナー・テクニックの創始者であるサンフォード・マイズナーから直接演技指導を受けた数少ない本物の日本人のひとりです。また、数々のハリウッド・スターを生み出したアクターズ・スタジオの日本人として2人目の生涯会員でもある方です。青山治さんは、そのボビーさんの信頼するお弟子さんです。

通常、マイズナー・テクニックは習得をしようとすると2年以上の時間が必要となりますが、ボビーさんには、お願いして、アクターズ・ヴィジョン用にもっと短期間で習得可能な特別なカリキュラムを組んでいただきました。

俳優のキャリアがあるのにいまいち突破できてないと自覚のある方、基礎的なことを改めて見直してやってみたい方、これから演技の世界に入るうえで正しいことを教わりたい方、ぜひとも、「マイズナー・テクニック・クラス」を受けてみてください。フィルムの中で、本能で生きること、衝動で行動すること、「本物としてそこに居ること」を習得し「鮮やかな演技」を映像として残してほしいと思っています。

次のマイズナー・テクニック・クラスは、2019年5月からを予定しています。4月から告知をはじめます。

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数々の監督と共にワークショップをやり続けた経験から痛切に感じるのは「リアリズム演技」こそがこれからの日本の俳優に必要だということです。そして、どうやれば「リアリズム演技」を手に入れることが出来るのか、それを書いた決定的な本が出版されました。それが、アクターズ・ヴィジョンでも演技指導をしていただいているボビー中西さんの「リアリズム演技」です。