マイズナーテクニック+アルファ・クラス2022年9月期

アクターズ・ヴィジョンは、基本、「映画監督を講師とした」俳優のためのワークショップを開催しています。正解かどうかは「現場」にあり「稽古場」にはない。なので、第一線で活躍している監督がたに演技を見てもらい、俳優としての可能性を判断してもらおう。ということで、長らく「映画監督を講師とする」俳優ワークショップを開催し続けています。

結局、現場で良し悪しを判断し、俳優たちから演技を引き出し、作品を作って行くのは映画監督ですから、その監督に自分という俳優の持っている演技スキルを見てもらい、現場でどれほど通用するかを判断してもらえるというのが「映画監督を講師とした」俳優ワークショップの大きなメリットです。

しかし、その一方で「問題」もあります。それは「現場に連れて行くにはまだまだ演技的に問題がある」と判断された場合です。その場合、本来ならば「演技を修正」していただかねばならないわけですが、しかし映画監督は「演技を指導すること」が専門の職業ではないわけですから、すべき「演技の修正」ができない。

ですが、俳優ワークショップには、演技体としては非常に魅力的で可能性を秘めているのに演技的には問題のある人たちが、たくさん来るわけです。この人たちの、演技的問題の本質を解き明かし、改善できれば、この人たちの活躍の場はもっともっと増えるはず。そう考えた僕はいろいろな方法を試しましたが、結果として行きついたのは「マイズナー・テクニック」でした。

2016年から「演技における問題点」を修正するためのクラス、演技の基礎を教える「マイズナー・テクニック」クラスを併設しました。これにより、演技体としては魅力的でありながら「演技に問題のある」多くの俳優たちの「演技方法の修正」をお手伝いすることが可能になりました。

この「マイズナー・テクニック」という方法によって、驚くほど、演技の質を変えることができます。このテクニックの存在を知った時には「こんな方法があったんだ」と驚きを隠せませんでした。実際、当方で主催してきた演技基礎ワークショップにおいて、数々の俳優たちが「マイズナー・テクニック」を習得し、演技の質を劇的に改善し、映画やドラマで活躍するようになったのを沢山見届けてきました。

「マイズナー・テクニック」とはなにか。それは、人間が思わずしてしまう「考えた演技」を、「「本能」にゆだね、自らの内に生まれた「衝動」によってのみ支配された演技」に変える合理的で体系的なテクニックです。

ちなみに、映画やテレビドラマで俳優として活躍するために何が必要なのかと言うと、「観客・視聴者が求める演技ができること」と答えたいです。そして「観客・視聴者が求める演技」とは、見ていてそれが演技だと言うことを忘れてしまうぐらい迫真の演技のことなのです。つまり演技を超えた演技、その感情や行動が登場人物たちの本当の感情や行動であると観客・視聴者が信じてしまうような演技のことです。

とはいえ、演技とは台本に書いてあることの実行ですから、客観的には、本当の人生の行動のように見えながら、実のところ演じる俳優にとっては、相手が何を言うのか、何をするのか、それに対してどう反応するべきなのか、そして今後の展開がどうなっていくのか、答えのわかりきったことなのです。だからこそ、俳優たちはついつい答えに沿おうとしてしまう。体が、その行動や発言を要求していないのに、その行動をとり、その発言をしてしまう。だから、作られた、考えた、あきらかに嘘と分かってしまうような演技をしてしまうことになる。結果、観客・視聴者はその嘘を見抜きそっぽを向きます。それが分かるから製作者もその俳優を採用しない。演技体として魅力もありながらうまくいかない俳優はこういった同じ問題を抱えていたのです。

「マイズナー・テクニック」は、その問題を、合理的に体系的に解決し、俳優を、物語と言う仮想の設定の中で、真実に生きられるようにする方法です。まさに「考えた演技」を捨て、カメラの前、観客の前で、演技ではなく、「登場人物として生き様をさらす」ことができるようになるのです。

どのようにしてか。それを簡単に言うのは難しいですが、まずマイズナー・テクニックでは最初に、レペテションという訓練方法を学びます。これはアスリートにとってのジョギングや筋トレのように、俳優たちにとっての基礎トレーニングとして位置付けられた本当に感心するほど良くできたトレーニング方法で、なによりも、これを続けることで、俳優たちが本来自分の肉体が持ってたはずの感覚、言いたいことを言い、言いたくないことを言わないで、素直に反応し、素直に行動する、嘘をつかずに自分の感じた本当を選択する、そういった「したくないことはしない」という「頑固に正直な肉体」を取り戻すのに、こんなにも優れた方法があったのかとビビっています。

俳優が「したくないことはしない」という「頑固に正直な肉体」を持つことの重要性は、「台本通りにセリフを吐く」、「演出に指示された通りに行動する」ということが、安易にできなくなるからです。「台本に書かれているから」セリフを吐く、「演出に言われたから」行動をする。嘘をつくことに抵抗が無いと、そんなことが安易にできてしまう。心がそれを望んでいないのにそれをするから、観客・視聴者に嘘だと見抜かれてしまう。本当に体がそのセリフを吐きたくなっているのか?本当に体がその行動を取りたくなっているのか? 「したくないことはしない」という「頑固に正直な肉体」を取り戻すと、体が嘘を許さなくなります。嘘を許さない体になってしまうから、その俳優は台本通りにセリフを吐くこと、演出通りに行動することが難しくなる。そして、「もし、台本通りにセリフを吐き、演出通りに行動することをするならば」自分がそれを「本当にしたい」と感じていないとできなくなる。だから「したくないことはしない」という「頑固に正直な肉体」を取り戻した俳優は、簡単に嘘をつく俳優に比べて、そのセリフを言ったり行動するためには心からそうならないとだめな演技体になる。結果として、真実の、物語の中で生きることを、いやおうなく体が選ぶようになるわけです。だから、物語の中で真実に生きることを終着点として目指す「マイズナー・テクニック」にとって「頑固に正直な肉体」を作るレペテションは何より重要な基礎訓練なのです。

レペテションをある程度習得すると、次の階梯に進みます。ゲーム・アクティビティと言われるものをやります。これは「物語の中で真実に生きる」ための訓練です。これがまた優れた稽古法なのです。これを見出したサンフォード・マイズナーは本当に天才だと言わなきゃなりません。で、ゲーム・アクティビティ。これをやることで、嘘をつきたくなくなった俳優は「役柄を自分にリンクさせるための様々な方法」を学ぶことができます。もう、嘘が大嫌いになった俳優は、自分が真に望むことしかできない。そして、役を役として生きるだけではなく、それを自分として生きねば納得がいかなくなる。結果として、役を自分にリンクさせ、物語の世界で生きることになるわけです。

しかし、俳優が「物語の中で真実に生きる」と問題も発生します。それは俳優が監督の目指すものや台本の求める展開に従わなくなるという問題です。「役が求めるものではないのでできません」と俳優が言うようになるのを僕はついにあなたも役を生きるようになったのねと喜ばしいものと考えますが、と言っても、程度問題です。やはり監督は監督なのですから、その指示をどこかしら意識しないわけにはいきません。しかし、監督の言っている指示を意識したら意識したで、その意識を「物語の中で真実に生きる」ということとどのように融和させるかは、やっぱり悩ましい問題です。しかし、それを実現するテクニックをゲーム・アクティビティをしながら手に入れることができます。それは世阿弥が言う所の「離見の見」に近い俳優の意識の状態だと思います。あくまでそれが見世物であることをどこかで忘れずにコントロールもしながら、状況を信じ生き様を見せることができるようになります。

このように、「マイズナー・テクニック」を学びながら、考える演技を離れ、嘘のない、物語の中で登場人物として生きる演技を手に入れるクラスを、9月から3か月間、あらたに開講したいと思っています。

講師は、自身が俳優であり演技指導者としてもキャリアをお持ちの、野田英治さんです。演技指導者のボビー中西さんに長く師事し、そのほかにもメソード演技に始まり、スタニスラフスキー、エリック・モリスシステム、マイケル・チェーホフ、イヴァナチャバック、PEM(ペルデカンプエモーショナルメソッド)、レーチなど、様々な演技指導法を学んだ演技指導のエキスパートです。

野田さんとの話し合いの中で、今回、マイズナー・テクニックをお伝えするクラスを新設するにあたって、よりそのテクニックを映画やドラマの現場での実践と結びつけるカリキュラムを考えました。

クラスは次の4段階を考えています。
STEP1:(基礎)正直に発話し、正直に反応する肉体を開発する
STEP2:(応用Ⅰ)現実に近い状況の中で嘘無く行動できるようになる
STEP3:(応用Ⅱ)虚構の状況を信じてその中で嘘無く行動できるようになる
STEP4:(実践)得られた方法を様々な作品に生かす

この4段階の習得を通して、「作品の世界の中で自由に生きる方法」、「生き様をフィルムに残す方法」を会得して行ってもらいたいと思っています。

今回の募集クラスを「マイズナー・テクニック+α(プラスアルファ)・クラス」としているのは、野田さんの経験が、マイズナー・テクニックにとどまらない、他の流派の方法も取り入れるという意味で「+α」であるとともに、最終的には、参加者のみんなと映画や演劇などを作成し実際世に発表していくという意味で「+α」とさせていただきました。

自分の芝居にもっともっと輝きが欲しい人、基礎的なことをちゃんと教わりたい人、取得した技術を使って作品を作ってみたいと思っている方、ぜひとも、野田英治さんの「マイズナー・テクニック+α・クラス」を受けてみてください。映画やドラマの中で「真実に生きること」、「本物としてそこに居ること」を習得して、沢山の人々を感動させる俳優になって欲しいと思っています。

(アクターズ・ヴィジョン代表:松枝佳紀(Matsugae Yoshinori))

【講師】

野田英治

1977年生まれ。舞台、CM、TVドラマ、映画の他にラジオレポーター等もやっている東京都出身の俳優。映画「RIKO」(井坂聡監督)でデビュー。その後、小劇場・商業演劇を経て、ここ数年は映像中心の活動をしている。また海外(韓国)などでも舞台公演を行っている。演技講師としては、以前、訪問カウンセラーとして、多くの引きこもりの方々に寄り添い、対話をしながら社会復帰させてきた経験を生かし、俳優たちに寄り添う指導方針を持っている。週に100名以上の俳優指導を行い、また外部での映画監督を中心とするWSでの定期的な演技レッスン、芸能事務所や養成所での指導を行う。個人レッスンも行っており、商業映画主演の演技サポートや、短編映画の主役オーディションで合格、TVドラマのレギュラー演技サポートなどの実績がある。

日程】
2022年
9月13日、20日、27日、10月4日(前半4回)
10月11日、18日、25日、11月1日(中盤4回)
11月8日、15日、22日、29日(後半4回)
(毎週火曜日、全12回)

【クラス】
・朝クラス 10:00~13:00 STEP1(基礎)
・昼クラス 14:00~17:00 レペ会
・夜クラス 18:00~21:00 STEP2・3・4(応用Ⅰ、応用Ⅱ)

※ 基本的に、STEP1→STEP2→STEP3→STEP4の順番で受講していただきたいと思っています。
※ しかしながら、STEP1のみでも、リアリズム演技の核心はつかんでいただけると思います。
※ マイズナーテクニックの経験があり、STEP1を飛ばして、STEP2から始めたい方は申し出てください。考慮させていただきます。
※ レペ会は、STEPのレベルを超えて、様々な人々が、乱取り稽古をする場所と考えてください。レペテションを習得されている方に限定します。
※ ご自分の希望クラスが上記予定にハマらない場合(たとえばSTEP1を受けたいが朝に行くのは無理だと言うような場合)はご相談ください。考慮させていただきます。
※ STEP4参加者と実際に映画や舞台を作成していきたいと考えています。製作した映画は劇場での公開を目指します。また舞台の場合も劇場を借りての公演を致します。
※ マイズナーテクニック+αクラス参加者向けの、映画監督やプロデューサーなどを迎えてのシークレットワークショップなども行う予定です。

【場所】
都内

【参加条件】
・本気で、リアリズム演技を身につけたい方
・映画や演劇で活躍したい方

【注意事項】
・性的シーン、暴力的シーンを演じていただくことはありません。
・必要以上の身体的接触を求めることはありません。
・嫌なことはやらないで構いません。そのことで不利になるようなことはありません。

【ハラスメント対策】
・アクターズ・ヴィジョンでは、次のようなハラスメント対策をとっております。ご了承、ご理解をよろしくお願いします。また、このようにして欲しいと言う要望があれば遠慮なく言ってください。
 http://actorsvision.jp/?page_id=2347

【コロナ対策】
・アクターズ・ヴィジョンでは、次のようなコロナ対策をとっております。ご了承、ご理解をよろしくお願いします。また、このようにして欲しいと言う要望があれば遠慮なく言ってください。
 http://actorsvision.jp/?page_id=2437

【定員】
1クラス12名程度

【レッスン費用】
4回あたり、19,800円(税込み)

【参加方法】
まずメールにてエントリーして下さい。
メールのタイトルを「マイズナー202209」として、
メール本文に
(1)お名前(本名でも芸名でも構いません)
(2)ふりがな(お名前の読み方を平仮名でお書きください)
(3)自認する性
(4)生年月日(表記は1982/7/14のように年月日を/で区切り、西暦で)
(5)連絡先電話番号(すぐにつながる携帯番号をお願いします)
(6)所属事務所名、担当者名、担当者連絡先電話番号
(7)受講希望クラスを次から1つ選んでください。
    ・STEP1:基礎 (火曜朝クラスもしくは昼クラス)
    ・STEP2:応用Ⅰ(火曜夜クラス)
    ・STEP3:応用Ⅱ(火曜夜クラス)
    ・STEP4:実践(火曜夜クラス)
以上7項目にお答えのうえ
「事務所作成のプロフィール」もしくは「自分で作成のプロフィール」を添付し
ワークショップ事務局
actorsvisionjapan@gmail.com
までメールをお送りください。
9月10日まで受け付けます。
応募者多数の場合は先着順とさせていただきます。