うちのワークショップは「俳優演技を鍛えること」に重きを置かず、「こういう面白い俳優がいますよというのを映画監督たちにプレゼンする場であること」に重きを置いています。
2005年に活動を開始して、最初の十年ぐらいは、自分たちで映画を作るなんて思いもよらなかったので「撮影予定のある映画監督たち」に来ていただき、無名だが魅力のある俳優たちに出会ってもらって、いずれ撮影する映画やドラマにワークショップ参加者から何人かをピックアップしてもらう。というのを続けてきました。
自主映画においてオーディションはありますが、メジャーな映画やテレビドラマにおいては開かれたオーディションの無い日本の芸能界では、有名事務所に所属する以外にオーディションのチャンスがそもそも無いので、アクターズ・ヴィジョンのようなチャンスが無名俳優たちにあることはとても貴重で、ウチの試みは本当に沢山の人たちに支持をしてもらえています。
しかしながら、そのやり方の問題点もあって、それは、ウチで講師をされる監督がたは名声実力とも日本の上から数えた方が早い方々であって、メジャーもメジャーなので、その撮られる映画やドラマは大抵予算規模が大きく、そうなってくると、自主映画と違って、監督がそう簡単にキャスティングを決められない状態になっていて、すると、うちのワークショップから出演者が決まったとしても、作品の隅っこの方だったり、隙間だったりすることが多くなる。そんな状態で、とてもメインにキャスティングしてもらうなんて無理、という問題点がありました。
とは言うものの、ウチにくる俳優たちの中には無名だけど魅力的な人たちがいるのは事実で。なんとかそういう俳優たちをメインキャストにする映画はないかなあとずっと思っていたんですが、なかなかそんなプロジェクトがない。ならば、自分で作ってしまえという気持ちになり、企画したのが2016年7月の 天野千尋監督ワークショップでした。このワークショップではワークショップのメンツで映画を作るということを公言し、結果できたのが「ミセス・ノイズィ」という映画でした。
しかしながら、映画を作ることには難航し、というか、作るだけならすぐに作れたはずですが、作ったで終わりではなくて、ちゃんとみんなに見てもらえる映画にするにはどうすれば良いだろうと試行錯誤するうちに映画ができあがるまでに4年が経ってしまいました。
その間に、先に別の映画を作る機会が突然やってきました。
2016年6月にやった荒井晴彦監督ワークショップで使った題材が面白かったので、それを映画化したいなあとつぶやいていたら、それやろうよと、ひょんな拍子で映画が作られることになったのです。それが「空の瞳とカタツムリ」でした。
この「空の瞳とカタツムリ」はヒットこそしませんでしたが、縄田かのん、中神円、藤原隆介という、まだまだ無名だが魅力的な俳優たちに主演という大役、俳優的チャレンジを与えられたこと、結果、映画が作品として素晴らしいものになったこと、それが大変嬉しかった。叶わなかったけど、ベルリン国際映画祭でコンペ部門ノミネートとして検討していると連絡もらえたのも嬉しかった。それが2019年。
そしてその秋、映画第二弾「ミセス・ノイズィ」が東京国際映画祭スプラッシュ部門に選ばれたとたん注目され、あれよあれよと言う間にTOHOシネマズや新宿武蔵野館で公開が決まり、コロナがあって上映延期になったものの、2020年の12月4日、全国の劇場で上映され、いろいろ見ている方に好評をいただいて、当初2週公開できれば良いと言われたところ結果15週も公開されることになり、いま、そろそろ劇場公開が終わろうとしていますが、まだまだ見ていない方も多く、今後は配信など、次の展開を考えているところです。
そして、この映画「ミセス・ノイズィ」のちょっとしたヒットは、アクターズ・ヴィジョンの環境を少しだけ変えました。簡単に言うと、次の映画を少しだけ作りやすくなりました。なので、現在、アクターズ・ヴィジョンは、今後撮影予定の企画をそこそこ幾つか抱えています。全容はまだお話しできませんが、そのうちに何本かは、関連してワークショップを開いたりしているので、半ば公になっています。むしろ今年のワークショップはそんなのばっかりですね。2月の安田真奈監督のワークショップもそうだし、3月の橋本一監督のワークショップもそうでした。
ちなみに、ワークショップ映画を作ろうと思っているのではありません。
良くある映画学校が卒業制作のようなものでワークショップ映画を作りますが、あれは映画の製作費を「参加する俳優たちの参加費」でまかなっているため宣伝や配給にかけるお金がなく、言い訳程度の上映で、どんなに良い作品でも見られずに終わることが多い。お客を入れるために作られたものでは無いから、上映すれば映画の使命は終わりで、世の中の人にはほとんど顧みられることはなく、この上映の影響で、出演俳優たちがメジャーから引っ張られて「俳優として食べられるようになる」なんてことはほとんどない。
「カメラを止めるな!」のヒットと出演俳優たちのその後の活躍は、本当に稀有なことです。ほとんどのワークショップ映画はそんなことにはならずに、世に知られることなく消えていきます。
だから、アクターズ・ヴィジョンはワークショップ映画を作ろうとは思っていません。作ろうとしているのは、お金もキャスティングも普通の映画のようにやる、ちゃんとした商業映画です。ちゃんとした商業映画だが、普通の商業映画と少し違うとすれば、それは普通よりもちょっとだけ多く無名の俳優をメインキャストで出演させるチャレンジをしているというところです。
アクターズ・ヴィジョンは、俳優たちの「映画に出たい」だけの欲望に付き合うためのワークショップ映画を作ることを目的にはしていません。出演した俳優たちが報われるような話題作をつくること、出演した俳優たちが演技者として名が知られるようになり、俳優として食べていけるようになるような、面白く、考えさせられ、沢山の人たちに見てもらえ、話題にされ、結果として商業的にヒットする、そんな映画をつくること、アクターズ・ヴィジョンはそれを目的にしています。
2月にワークショップを行った安田真奈監督で撮る映画もそうですが、いまワークショップを行っている橋本一監督で撮る映画もそうです。
そして、4月。また、映画を作ることを前提にしたワークショップを行います。
監督は「ミセス・ノイズィ」や今年秋に公開予定の園子温監督の映画「エッシャー通りの赤いポスト」などでプロデューサーをしている高橋正弥さんです。高橋正弥さんは、相米慎二監督、市川準監督、根岸吉太郎監督、佐々部清監督、園子温監督、宮藤官九郎監督などの歴史的名監督たちの映画作りを制作や演出などの側面から支えてきたベテラン映画人です。今回は、「凪待ち」や「ふしぎな岬の物語」などのシナリオを担当している加藤正人さん脚本で満を持して映画を撮ります。
撮る映画の内容はまだ明かせませんが、簡単に言うと、夢を諦めようとしていた若者が最後に掴んだチャンスの話です。夢は叶うのかそれともだめなのか。最後に何を掴むのか。そんなお話です。老若男女、性別年齢関係なく、魅力的な俳優たちとで会うことが出来ればなと思っております。全キャスト、通常のキャスティングとワークショップからの採用と両ニラミでやり、映画にとってより良い選択を行っていきたいです。時期ですが、映画制作は常に流動的であり確定的なことは言えませんが、年内中に撮影が行われると良いなと思っています。
新型コロナウィルスCovid-19のことはありますが、かと言って、映画を止めてよいわけがありませんし、俳優を目指そうという人、映画の中で活躍したいという人たちの思いを止めてよいわけがありません。十分な感染対策をしつつ、未来のために、ワークショップを開催したいと考えます。ぜひ沢山の方に応募いただきたいと思います。
※ 「俳優演技を鍛えること」に重きを置かず、と言いましたが、とはいえ、俳優演技を鍛えることも必要なので、そのためにマイズナーテクニックをボビー中西さんのところで教わっています。→ マイズナー・テクニック
◎ 講師プロフィール
高橋 正弥(Masaya Takahashi)
谷口正晃監督 「ミュジコフィリア」2021年秋 ※プロデューサー
園子温監督「エッシャー通りの赤いポスト」2021年秋 ※プロデューサー
天野千尋監督「ミセス・ノイズィ」2020年12月4日 ※プロデューサー
杉山泰一監督「星屑の町」2020年3月6日 ※プロデューサー
鈴木おさむ監督「ラブ×ドック」2018年5月11日 ※チーフ助監督
園子温監督「ピアニストを撃つな!」2018年4月6日 ※プロデューサー
萩原健太郎監督「東京喰種 トーキョーグール」2017年7月29日 ※チーフ助監督
吉田照幸監督「疾風ロンド」2016年11月26日 ※チーフ助監督
宮藤官九郎監督「TOO YOUNG TO DIE 」2016年2月6日 ※チーフ助監督
堀口正樹監督「ショートホープ」2014年8月16日 ※プロデューサー
宮藤官九郎監督「中学生円山」2013年5月18日 ※チーフ助監督
加瀬聡監督「スピニング・カイト」2013年5月18日 ※プロデューサー
佐々部清監督「ツレがうつになりまして。」2011年10月8日 ※チーフ助監督
波多野貴文監督「SP 革命編」2011年3月12日 ※チーフ助監督
根岸吉太郎監督「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」2009年10月 ※チーフ助監督
宮藤官九郎監督「少年メリケンサック」2009年2月14日 ※チーフ助監督
宮田宗吉監督「バカバカンス」2008年7月 ※プロデューサー
根岸吉太郎監督「雪に願うこと」2005年10月28日 ※チーフ助監督
根岸吉太郎監督「透光の樹」2004年10月30日 ※チーフ助監督
市川準監督「東京マリーゴールド」2001年5月12日 ※チーフ助監督
相米慎二監督「風花」2001年1月27日 ※チーフ助監督
市川準監督「ざわざわ下北沢」2000年7月7日 ※チーフ助監督
◎ワークショップ概要
【日程】
2021年4月15日(木)、16日(金)、22日(木)、23日(金) 全4日間
【クラス】
・昼クラス(13:00-16:00)
・夜クラス(18:00-21:00)
※ 毎日、感染症対策のため、検温チェック、消毒などを行いますので、早めにご来場いただきます。
※ また、参加される2週間前3月31日からの毎日の検温をご報告いただきます。ので、参加を希望される方は「今日から毎日」の検温を記録しておいてください。
【場所】 都内
【参加費用】 33,000円(税込み)
【応募資格】
・高橋正弥監督の作品への参加を希望する者
・何がなんでも演技者として突出したい者
【締め切り】昼夜クラスとも30名
※感染症対策を行っております。
※毎回、応募者多数により早めに打ち切りますので、お早めにお申し込み下さい。
◎エントリー方法
【1】まずはメールにてエントリーして下さい。
「高橋正弥監督による俳優のための実践的ワークショップ2021」
参加希望の方は、
・メールタイトルを「高橋WS」とし、
・メール本文に
(1)お名前(本名でも芸名でも構いません)
(2)ふりがな(お名前の読み方を平仮名でお書きください)
(3)性別
(4)生年月日(表記は1982/7/14のように年月日を/で区切り、西暦で)
(5)連絡先電話番号(すぐにつながる携帯番号をお願いします)
(6)所属事務所名、担当者名、担当者連絡先電話番号
(7)参加希望クラス((1)昼クラス、(2)夜クラス、(3)どちらでも)
(8)自己紹介
をお書きください。
・そのうえで、事務所所属の方は事務所作成の写真付きプロフィールをメールに添付してください。
・無所属の方は、ご自分で作成の写真付きプロフィールを添付してください。
・写真付きプロフィールとは、A4サイズ、PDFで作成された次のようなものです。
http://actorsvision.jp/wp-content/uploads/2019/02/entrysheet.pdf
・以上のメールを作成し、ワークショップ事務局
actorsvisionjapan@gmail.com
までメールをお送りください。
【2】参加希望俳優の中から、本ワークショップの目的に合致した者に参加許可の通知および入金のご案内をメールいたします。(書類審査・入金案内)
【3】入金をしていただいた方から、正式エントリーとさせていただき、集合場所やテキストについての案内を送らせていただきます。(参加決定)