現在、各所で、榊英雄監督の問題、映画へのキャスティングを餌にした性行為の強要疑惑についての報道がなされています。僕としては2022年2月24日からの4日間で榊英雄監督のワークショップを開催した者として見解を表明する必要があると考えここに記そうと思います。
被害にあわれた方々には本当に痛ましいことが起こったと悲しく、お見舞い申し上げるとともに、今回の一連の報道がその方々の傷の癒えることにつながり、さらには今後の類似事件の防止につながることを切に願います。
今回、榊監督のワークショップを開催するにあたっては、報道にあったようなことを榊さんが起こしている可能性があることは全く知らず、このワークショップを企画してしまいました。榊さんは演出力にも定評があり、次回作のキャスティングのことも言われていたので、俳優たちの活躍場所が増えると単純に思い、やることを決めました。とは言え、いまとなっては、榊英雄監督のワークショップに参加したことが、参加したみんなが傷つくことにつながらないといいなと思っています。
そもそもワークショップとは、氏素性の知らぬ人たちが出会う場所ですから、怪しいです。ワークショップを主催するまえ、僕はそう思ってました。だから自分が主催するときに心がけようと思ったのは怪しくない「ちゃんとした場」にすることでした。一流の現役の監督たちに講師をお願いすることが一番「ちゃんとした場」につながると思い、そのような監督がたに講師をお願いしてきました。ワークショップの内容も意味ある内容、意義ある内容にするように腐心をしてきました。連絡先交換などの結果として起こるストーカー沙汰や事件なども当初から想定し、そうなることを恐れており、それを禁じるような注意も行ってきています。また実際に問題のある参加者を排除することも具体的に行ってまいりました。当社のワークショップにリピーターが多いのはそのようなことを通じて「ちゃんとした場」を築けていたからだと思っています。
だいぶ昔ですが「映画に主演させてやるからと監督から体を求められたがどうしたらいいか?」と参加者から相談を受けたことがあります。もちろんその監督はうちのワークショップの担当監督ではなくて、よそのワークショップの監督だったのですが、その時はこう答えました。「映画はものすごいお金がかかっているし、監督としても映画を1本でもハズしたらシャレにならないことになる。そんな運命のかかったものの主演を寝るかどうかで決めるわけがない。寝ても主演なんかにされずに遊ばれて終わる可能性がある。キミが演技力と魅力を鍛え、映画にとって本当に必要な人になった時には、寝ることを条件などにされずにキャスティングされる日が必ず来る。だからそんな映画なんか蹴ったほうがいい」それが僕の持っていた公式見解でした。つまり、誘った側の問題を問うよりも、断れないほうに問題があると思っていました。
僕は当初から俳優は「選ばれる側」だけではなく「選ぶ側」でもあると思っています。俳優もたくさんいますが監督もたくさんいます。絶対この監督に気に入られなければ人生がだめになるわけではない。そう思ってほしい。たくさんいる監督の一人にすぎないんだから。僕はそう思っていました。だから、断れと暢気なことが言えたのです。地位関係が圧倒的に違う場合、断れない、もしくは断りにくいということが生じる。ということに想いが足りなかった。それをいまは反省します。問題は断れなかったほうにあるのではなくて、下卑た提案をするほうにあるのは明白です。
ですので、うちのワークショップでこれまでそういった行為がなかったにせよ、今後は、俳優の行動ばかりを注意してきたことを反省し、権力を持つ側であるワークショップ講師(監督たち)に対しても万が一でもそのような誘いを行うことが無いように注意喚起を徹底していくべきであると考え、その徹底を行ってまいります。そしてもちろん、ワークショップを主催する側(僕やほかのスタッフ)にもそのようなことが無いように細心の意識をもって運営をやってまいりたいと思います。ワークショップという場が、未来に希望をつなげる場所となるように尽力してまいりたいと思います。
改めて被害を受けた方々の心に安寧が訪れることを祈念するとともに、このようなことが起こらないように、僕の周囲において徹底するとともに、勉強学習を怠らず、自らをアップデートして行ければと思っております。
2022年3月11日
アクターズ・ヴィジョン代表
松枝佳紀
※ 今回、榊WSに関する情報を消させていただきました。書いたことはその時に僕の思ったことであり何ら嘘はないのですが、掲載自体にワークショップ講師となる榊監督の良いところをほめたたえることに主眼がありましたので、今後それを目にするかもしれない人たち、とくに被害者たちの気持ちを考えて消しました。