アクターズ・ヴィジョン代表のマツガエです。
三浦大輔監督は「愛の渦」や「娼年」など、センセーショナルな映画を撮られている監督として、いまやその名をはせていますが、最初に三浦さんにワークショップ講師をお願いしたのは2014年のこと。映画「愛の渦」公開直後でしたが、そもそも三浦さんにワークショップ講師をお願いしたのは、僕が彼の作っている演劇のファンであり、にいつも彼の作る作品に衝撃とともに感動させられていたからでした。
90年代の半ばから劇団ポツドールの主宰、演出家、劇作家として登場した三浦さんの作る演劇は、セミドキュメンタリーと呼ばれ、舞台上で起こる人々の駆け引きや会話や、恋愛、セックス、裏切りなどが「本当に」起こっているように見える「恐ろしい緊迫感」を伴ったものでした。俳優たちが、本当に人を愛し、欲情し、あるいは呪い、嫌い、憎み、恥じらい、自己嫌悪し、絶望しているからこそ、その「緊迫感」がある。そう思わせられるような、息の詰まるような空気がどの舞台にも「必ず」ある。舞台上で起こっていることなんて「嘘」に決まっているのに、「嘘」と思えない「緊迫感」、それをどうやって作っているのか、どのように演出しているのか、それをポツドールの俳優ではない俳優、例えばうちワークショップに来る俳優たちができるのか、それを見てみたい、試してみたい。そう思って、2014年、三浦さんに講師をお願いしたのでした。
その当時三浦さんは、三つの指示だけで、俳優は皆必ずリアルな芝居ができるようになると言っておられていて、そして実際、4日間のワークショップで半分以上の人たちがそれをできるようになったのでした。
もちろん、うちのワークショップは、その講師の作品に出演する権利を手に入れるオーディションの要素が強く、実際に三浦さんのワークショップの参加者から何人もが「何者」などに出演しています。しかし、そのように具体的にキャスティングが決まることも、もちろん重要ですが、この三浦大輔監督のワークショップのような場合、俳優として、あるいは人間として「自分が何に凝り固まっているか」も明らかになるし、それを突破する「きっかけ」にもなる。そういう意味で、三浦さんとやった最初のワークショップ、2014年のワークショップは、参加した俳優たちの壁を壊す「大きなきっかけ」となったワークショップでした。
その後、継続的にワークショップをやりたかったのですが、 三浦さんが売れっ子になり忙しかったこともあり、なかなかかないませんでした。が、今回5年ぶりにOKをいただくことができました。
しかし、5年も会わなければ人間は変ります。
で、見たんです。今年になって。フジテレビで三浦さんが監督脚本を担当したフェイクドキュメンタリー「人間の証」を。
驚き、感動しました。三浦さんが進化している。実験している。「より大きなもの」を捕まえるための用意周到な「実験」をしている。
もともと僕が三浦さんの演劇に感動させられたのは、その「ドキュメンタリー性」だけではありませんでした。描かれる卑近で下世話な人間の醜い感情や欲望の中から、必ず見つけ出される「まばゆいばかりの人間の輝き」。それを取り出す三浦さんの手腕に、いつも僕は号泣を押さえられなかった。舞台版「愛の渦」、 舞台版 「裏切りの街」 、舞台版 「娼年」、映画化されたすべての舞台は僕の心を打ち抜きました。
その根底にあるのは、三浦さんの考え方。僕ら庶民は、平均的には、平凡な、これと言って言うこともない人生を生きている。だけど「たまに」映画やドラマなんかよりも「感動的な」、あるいはズタボロになるほど「絶望的な」日常の瞬間、奇跡に出会うことがある。という確信でした。
それは本当に「たまに」のことだけど、映画やドラマなんかに譲れないほど「死にたくなるほど嬉しいこと」や、「狂いたくなるほど愛しく思うこと」や、「殺したくなるほど憎たらしいこと」や、「思い出したくなくなるほど悲しいこと」、そんなズタズタに魂が引き裂かれる日常を僕らは「たまに」生きていて、それは本当に起こる。「たまに」起こる。
三浦さんは、その「たまに」のことが起きる条件やなにかを直観的に知っていて、それが「ドキュメンタリーな手法」を導入した今回のフジテレビの「人間の証」においても生きていて、本当だったら「たまに」しか起こらないはずの「日常の中の奇跡」を番組内で確実に起こしている。「日常の中の奇跡」を引き起こす「条件」や「設定」を導入しているという意味では「フェイク」だけど、その起こる流れや彼女たちの肉体は「本物」であって、結果として起こった「日常の中の奇跡」は「紛れもない真実」として番組の中に映し出され、演じた橋本マナミや女優たちの心をズタズタにしていく。三浦さんはそれができることを「人間の証」で実験しているのだ。あの番組が視聴率が良かったのかどうかは僕は知らないけど、あそこで実験したものを手に入れて三浦さんは次の何かを企んでいる。「日常の中で奇跡が成立する条件への確信」。あそこで得られたものは三浦さんをさらに「深い冒険」に駆り立てるはずだ。それは、必ず、「人間の可能性」を発見し、「どうしようもない希望と絶望」を見出す何かになる。「冒険的で挑戦的な作品」になる。そのことを「人間の証」で僕は確信しました。
その刺激的で危険で、だけど人間の美しい真実を唄う新たな「冒険」に参加したい人。ぜひともこのワークショップに参加してください。
※ 2014年のときの三浦大輔監督インタビュー → http://alotf.com/ws/ws17_1/
(アクターズ・ヴィジョン代表マツガエ)
◎ 講師プロフィール
三浦大輔(Daisuke Miura)
1975年12月12日生まれ。北海道出身。脚本家、演出家、映画監督。早稲田大学の演劇サークルを母体に、96年に演劇ユニット・ポツドールを結成。以降、主宰として全本公演の作・演出を手掛ける。06年、『愛の渦』にて第50回岸田國士戯曲賞受賞。近年の主な舞台『失望の向こう側』(14/作・演出)、『母に欲す』(14/作・演出)、『禁断の裸体』(15/演出)、『娼年』(16/脚本・演出/原作:石田衣良)、『そして僕は途方に暮れる』 (18/作・演出)等。映画作品に『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(10/脚本・監督/原作:花沢健吾)、『愛の渦』(14/原作・脚本・監督)、『何者』(16/脚本・監督/原作:朝井リョウ)、『裏切りの街』(16/原作・脚本・監督)、『娼年』(18/脚本・監督/原作:石田衣良)がある。本年5月〜7月にはテレビ番組『人間の証』(フジテレビ系)の脚本、総監督をつとめた。
◎ ワークショップ概要
【日程】
2019年9月26日(木)~29日(日)の連続4日間
【時間】
昼クラス:13時から17時まで
夜クラス:18時から22時まで
※昼か夜どちらかのクラスをお選びください。
※ 4日間、同じ時間帯のクラスに参加してもらいます。
【場所】都内近郊を予定
【参加条件】
・三浦大輔監督作品に出演を希望する者
・俳優として自分の殻を破きたい人
【参加費用】32,400円(消費税込み)
◎エントリー方法
【1】まずはメールにてエントリーして下さい。
「三浦大輔監督による俳優のための実践的ワークショップ2019」
参加希望の方は、
メール本文に
(1)お名前(本名でも芸名でも構いません)
(2)ふりがな(お名前の読み方を平仮名でお書きください)
(3)性別
(4)生年月日(表記は1982/7/14のように年月日を/で区切り西暦で)
(5)連絡先電話番号(すぐにつながる携帯番号をお願いします)
(6)所属事務所名、担当者名、担当者連絡先電話番号(無所属の場合は無所属としてください)
(7)参加希望クラス(昼クラス、夜クラス、いずれでも構わない)
以上、7項目をお書きのうえ
所属事務所作成(もしくはご自分で作成)のプロフィール(最近の写真付き芸歴表)を添付して、 メールのタイトルを「三浦ws」として、ワークショップ事務局
actorsvisionjapan@gmail.com
までメールをお送りください。
【2】書類選考を行います。
【3】合格者に入金の案内をいたします。落選者には落選のメールを送ります。
【4】入金をしていただいた方から、正式エントリーとさせていただき、集合場所や準備、スケジュールについての案内を送らせていただきます。(参加決定)