「資本主義がもたらしている人類的危機を映画化する」橘潤樹監督による俳優のための実践的ワークショップ

新人俳優を抜擢する映画製作に意欲的なアクターズ・ヴィジョンですが、2022年に行われるワークショップの第一弾は、橘潤樹(たちばな-じゅんき)監督による俳優のための実践的ワークショップです。

普段CMディレクターをされている橘潤樹監督との出会いは、監督が初めて撮った劇映画「忘れられない」を見たことがきっかけです。なぜ見ることになったかというと、その映画に主演しているのが、僕がふだん仲良くしてる俳優の中谷太郎くんだったからです。

「みてください」という中谷くんの勧め。それで劇映画「忘れられない」を見てみたわけですが、見た途端、戦慄が走りました。その物語、その映像、そして俳優中谷太郎の真の姿をここまで引き出している演出家としての手腕。なにより、どうどうとした社会派とでもいえるような硬派な作品作り、しかも、それを難しい話にせず、感動するエンターテイメントにしていること。僕はそのことに感動し、すぐに中谷くんに連絡して「監督に会いたいから場をセッティングしてくれないか」とお願いしました。

↓ 「忘れられない」予告編 ↓

高円寺の喫茶店で会うと、雑談を交えて、現在やっておられるCMディレクターのお仕事のことや、好きな映画のこと、気になっている社会情勢のこと、これから作ろうとしている映画のこと、などをお聞きしました。そして

「いまの社会、なんかやばいね」

って話になりました。橘監督も、僕も、その「やばさ」に対して、映画やドラマって何かできるよね、って思っているところが一緒でした。

しかも難しい話では、見る人が限られてしまう。エンターテイメントにして沢山の人々に観てもらいつつ、結局みんなの心になんかを届けて、あわよくば世界を変えたい。そういう思いが橘監督と僕で、全く同じでした。

で、監督の初の劇映画「忘れられない」を見て、この人だと思った僕は、話しながらも、思いが強まり、この人の次に撮る劇映画、最初の長編映画は絶対僕がプロデュースしたいっていう気持ちになったのでした。帰り間際には、次の作品をぜひ作りたいとラブコールを送って別れました。

その後、映像で物語を作る現場を経験したいという橘監督は、CM会社の上司の理解もあって、テレビドラマのスタッフをやったり、この夏に撮った橋本一監督の映画の助監督をしたり、映画監督として立つための修行を続けてきたわけですが、そんな中「次撮りたいものが決まりました」と言って見せてもらったのが、次の企画書でした。はじめだけお見せします。


映画「Tokyo Factory」企画書
橘潤樹  

はじめに
「2022Tokyo」
未来があるもの達への危機感。「資本主義社会」が日本に牙を向いているこの時代。国や経営者、権力者達の無責任さに対する「怒り」がこの作品への原動力である。僕は弱者に強い人間が嫌いです。強者に立ち向かうバカが好きです。そんな子供じみたクレームみたいな映画を作りたい。そして未来を担う者たちが本当の利益とは何かを少しでも考えることができるような世界に進む助けになる映画を撮りたい。

大都会東京。

この街は人々の目にはどのようにうつっているだろうか。 都会の華やかさ。溢れる人々の活気。新しく生まれる文化。 でもこの街は、人で溢れているのに、寂しくて、孤独な街だと言う人もいる。 僕自身は素敵な街だと思っている。ただ見る角度を変えると、この街の見え方は一変する。

輝くのネオンの看板は、「資本主義」の象徴であり、人々の射幸心を煽る。 人々は電車に乗り様々な場所へと移動する。 その様はまるでベルトコンベアで運ばれる部品のようだ。 道路には、世界一密集した信号機の指示に従うだけの人々。 オフィスにたどり着き何かしらの商品を完成させていく。 高性能なスマホを搭載した人間は互いに監視し合い秩序を生み出す。 生み出される利益は、どれだけ遠回りをしても、資本家のもとへとたどり着く。

この街は権力者を潤わせるために昼夜問わず稼働し続ける大きな工場。それが今のTokyo。まさしく「Tokyo factory」なのである。

現在、貧富の差は拡大し、2極化は加速している。資本を持つものが圧倒的な強者であり選択する権利を持つ。彼らは、お金を生み出す錬金術師だ。彼らのことを人は「クジラ」と呼ぶ。

人々が働き成果を出せば出すほど「クジラ」たちは潤っていく。「資本主義」社会というシステムがある以上、この運命からはもう逃れられない。あらゆる可能性が存在しても、お金は寄り添ってくる。

今ではSDGsを掲げた偽善社会がトレンドなのである。電気自動車、ファストファッション、エネルギー開発。正義の裏には闇がある。

z世代のアメリカ人達は7割を越す人が「社会主義」に関心を示しているというデータもある。「資本主義」の最前線を走る国ですら競争社会の歪みや違和感を感じているのである。僕はこの話を聞いて衝撃を受けた。もう、資本を奪い合うのではなく。分け合おうよ。今の大人達を見て子供達はそう感じている。分け合うということ。なぜ子供の頃できたことが大人になるとできなくなるのだろうか。「資本」という存在に囚われて生きるということがカッコ悪い。もしかすると人類は退化しているのかもしれない。

これから広がっていく「格差社会」にどう立ち向かっていくべきなのか、人生100年時代。凋落していく街、東京で、何を信じなければいけないのか。何を考えなければいけないのか。みんなであがき考え始めなければいけない。

しかし、そこではっきり言えるのは、この工場はとてつもなく頑丈にできているということだ。


以上は企画書のサワリにすぎないし、これだけではこの映画でどんな物語が描かれるかわからない。しかし、ワクワクしないだろうか。こんなちっぽなけ場所のちっぽけな映画が、世界に食って掛かろうというのだ。

僕はこういう監督と出会いたかった。

だから今回のワークショップで募集をしたいのは、このようなお考えを持たれている監督の、上のような内容の映画に出てみたいと思う俳優たちです。大きな映画になると思います。もちろんエンターテイメントです。でも、みんなの心に刺さる映画にしなければなりません。その映画は様々な思いを持っている人たちの群像劇になると思います。子供たち、大人たち、老若男女、それ以外の性別のかた、人種的にも様々な方に参加していただきたいです。このワークショップで出会ってから本も作られます。なので、皆様の人となりを見て、登場人物を深く描いていきたいと思います。自分の人生を使って、俳優という肉体を使って、この世界を少しでも良い方向に変えていきたいかた、誰かを救いたいかた、救うためにはひどいやつをきっちりひどく描かねばならないから、ひどいやつを誰よりもきっちり演じられるという自信のある方、見かけ悪くて中身が優しい方、優しくてどう見ても善人なのに最低のやつを演じられる方、無邪気な人、何でもかんでも計算づく…に見える人とかとかとかとか、監督の想像力を刺激してくれる人。募集します。

(アクターズ・ヴィジョン代表:松枝佳紀)

あと、僕が衝撃を受けた橘潤樹監督の第一作「忘れられない」は次のURLから無料で視聴することができます。これを見ると、橘潤樹監督が撮る初長編映画に重要キャストで出なければという気持ちになること請け合いです。

https://www.youtube.com/watch?v=dg0OFKM7Dgk

◎ 講師プロフィール

橘潤樹(Tachibana Junki)

1990年生まれ。男性。
2012年、CM制作会社に制作進行として入社
2016年からディレクターとして活動を始める
2017年、ヤングカンヌ日本代表選考(橘・茂庭ペア)ブロンズ受賞
2018年、未完成映画予告編大賞 大根仁賞受賞
2020年、BOVA_finalist
2021年、ASIAN CINEMATOGRAPHY AWARDS
    にて映画「忘れられない」が最優秀作品賞を含む 3 部門を受賞

(受賞歴)
・ASIAN CINEMATOGRAPHY AWARDSにて 最高賞を含む3部門を受賞
  Best Film of the Month・Best Asian Short Film・Best Short Film
・Halicarnassus Film Festivalにて最高賞 Best Short Film
・Cannes Indies Cinema Festivalにて Best Scriptを受賞
・門真映画祭  優秀作品賞受賞
・2021ARFFベルリン//国際賞  Best cinematography受賞

(セレクションorファイナリスト受賞_映画祭)
・Venice Shorts
・Seoul Webfest
・Anatolia International Film Festival
・Tokyo International Short Film Festival
・SHORT to the Point Short Drama ‒ Official Selection
・SHINJUKU WORLD FESTIVAL
・Pune Short Film Festival
・知多半島映画祭(特別上映)
・夜空と交差する森の映画祭(特別上映 )


◎ ワークショップ概要

【日程】
2022年1月27日28日29日30日の連続4日間

【クラス】
・昼クラス:13時から16時(1時間延長の可能性あり)
・夜クラス:18時から21時(1時間延長の可能性あり)

【場所】
都内

【参加条件】
・橘潤樹監督作品に出演を希望する者
・感染症対策にご協力いただける方

【参加費用】
33,000円(税込み)

◎エントリー方法

【1】まずはメールにてエントリーして下さい。
「橘潤樹監督による俳優のための実践的ワークショップ2022」
参加希望の方は、メール本文に
(1)お名前(本名でも芸名でも構いません)
(2)ふりがな(お名前の読み方を平仮名でお書きください)
(3)自認する性
(4)生年月日(表記は1992/3/26のように年月日を/で区切り西暦で)
(5)連絡先電話番号(すぐにつながる携帯番号をお願いします)
(6)所属事務所名、担当者名、担当者連絡先電話番号(無所属の場合は無所属としてください)
(7)参加希望クラス((1)昼、(2)夜、(3)どちらでもかまわない)
以上7項目をお書きのうえ、
所属事務所作成(もしくはご自分で作成)のプロフィールを添付して
メールのタイトルを「橘2022」として、ワークショップ事務局
actorsvisionjapan@gmail.com
までメールをお送りください。

※ 添付していただくプロフィールは次のようなものです。
http://actorsvision.jp/wp-content/uploads/2019/02/entrysheet.pdf

※ 書き込めるようなエクセルバージョン
http://actorsvision.jp/wp-content/uploads/2021/04/entrysheet.xls

【2】書類選考による合格者に入金の案内をいたします。(書類審査・入金案内)

【3】入金をしていただいた方から、正式エントリーとさせていただき、集合場所やテキストについての案内を送らせていただきます。(参加決定)